「なーずな!」


ぼんやりとそんなことを考えていると、目の前に芹香と椿くんが現れた。


「な、何……?」


「次、移動教室だよ。早く行かないと……」


「あ……そうだった……。ありがとう、2人とも」


様子のおかしいあたしが気になるのか、椿くんがいぶかしげな顔であたしをじっと見てくる。


「あたしは平気だから、芹香はスミレのとこ行ってあげて」


「なずな……わかった……」


芹香がここにいて、スミレがいないということは、スミレは今1人で移動先の教室にいるはずだ。あたしが悪いんだから、スミレがひとりぼっちになる必要はない。


あたしがそう言うと、芹香は心配そうにしながらも先に教室を出て行った。


たぶん、あたしがまだスミレと仲直りしてないことを芹香は察したはずだ。


それから、椿くんも……。


なんとなく椿くんのほうに目を向けると、椿くんは真剣な、でも少し悲しそうな表情をしていた。