何で椿くんがどことなく嬉しそうなのかわからないし、答えって何のことなのかわからない。
聞き返すあたしに、椿くんは優しい目を向けてくる。
「春風さんにとって、染色さんはもう“本当の友達”だってこと」
「……!」
椿くんの言っている意味がよくわからなくて、何をどう考えてそう言ったのかわからなくて。
目をパチクリさせて首を傾げるあたしに、椿くんは「えっとね」と、考えをまとめながら説明する。
「俺思うんだけどさ、自分にとって友達はその子しかいないってわかったら、それってもう“本当の友達”と同じなんじゃないかな。
春風さんは、“本当の友達”はお互いのことが大事でお互いのことを信じられて、とか難しいこと考えてるみたいだけどさ。俺はね、ただ『こいつと一緒がいい!』って思える奴ができた時点でちゃんと、“本当の友達”に出会えてるんじゃないかなって思うんだ」
あたしにはスミレしかいない。スミレと一緒がいい。
そう思えるだけで、“本当の友達”なの?
でも、それならあたしは、随分前から思ってた。
だからこそ、芹香が邪魔で仕方がなかった。
だからこそ、嫌いだってスミレに言われた時はすごくショックで、別のグループに入ることもできなかった。
戸惑うあたしの気持ちを椿くんはわかっているらしく、うんと大きく首を縦に振った。