「春風さん、何かあった?」
核心を突かれ、ドキッと心臓が跳ね上がる。
「な、何も……」
と言いつつ目が泳ぐあたし。
そんなあたしを見て、椿くんはハーッとわざとらしく大きくため息をついた。
「俺には何でも話してって言ったでしょ」
椿くんの優しい口調と、とんでもなくゆるくなっている涙腺のおかげで、一瞬で視界が揺らぐ。
すると、椅子の上に置いていたあたしの手に椿くんの手が重ねられ、痛くない強さで握られた。
「……!」
驚いて椿くんを見上げたあたしに、椿くんは悲しそうに笑って言った。
「さっき、俺に笑ってくれなかったのは、授業に出ないで保健室に居ることと関係してるの?」
ああ、椿くんは本当に何でもお見通しなんだな。
「染色さん達のことでしょ?聞かせて?」
小さい子をあやすみたいな穏やかな声で促され、あたしは泣きじゃくりながら、遊園地に行った時のことから彩芽の嘘のことまで全部話した。