出会った時は、ほぼ毎日無表情だった椿くんが、今はこんなふうに笑っている。
親友とのわだかまりはまだあっても、椿くんは確実に前に進み始めたんだ。
それに比べて、あたしは……。
俯きそうになった時、試合が終わった椿くんと目が合った。
今までの椿くんなら目を逸らされて終わりだったけど、今は違う。
あたしに優しい笑顔を向けながら、手を振ってきた。
あたしも慌てて手を振り返したものの、上手に笑顔を作ることはできなかった。
こんなんじゃ椿くんに心配されちゃう。
悟られないようにすぐに顔を背けたけど、椿くんは見逃さない。
「春風さん!」
保健室からグラウンドへ続くドアを開けて、椿くんが中に入ってきた。
「ちょ、椿くん。授業中に何してんの!」
「今は俺達のチームの試合じゃないから。それに、俺も今さっき怪我したってことにすれば問題ない」
な、何それ……。
呆気にとられるあたしをよそに、椿くんは運動靴を脱ぎ、靴下であたしの座る長椅子の隣に腰かけてきた。