保健室には誰もいなくて、あたしは窓からグラウンドでサッカーをやる男子の体育を眺めていることにした。


なんとなく、目に入るのは椿くん。


やっぱり他の男子よりも群を抜いてサッカーが上手な椿くん。


サッカーを辞めてしまった理由を知っている今では、「またやればいいのに」なんて無神経なことを簡単には言えない。


でも、すごくもったいないなぁとは思った。


もし、椿くんの親友が雪くんみたいな人だったら、椿くんの親友も椿くんを裏切ってしまったことを悔やんでるんじゃないのかなぁ。


それだったら、きっと仲直りできるはずなのに。
きっと、また一緒に同じ夢を追いかけられるはずなのに。


――ピーッ!


そんなことを考えながらぼんやりと見学していると、椿くんがシュートを決め、先生の鳴らすホイッスルがグラウンド中に響いた。


チームメイト達に激励されたり、ハイタッチを交わしたりする椿くん。
その顔は、遠くからでもわかるぐらいの無邪気な笑顔だった。