親切なクラスメイトの言葉に甘えて、あたしは制服に着替え終わると保健室へと向かう。


更衣室を出る時、スミレと目が合ったような気がした。


『どうしたの、なずなちゃん?』


体育館とは逆方向へ進むあたしに、いつものスミレだったらきっとこんなふうに声をかけてくれたはずだろう。


でも現実は当然そんなことはなくて……。


「あれ、なずな……」


「芹香ちゃん!早く行かないと遅れちゃうよ!」


あたしに声をかけようとしてくれたのは芹香だけで、スミレはそんな芹香を止めるように腕を引いて体育館へ走っていった。


あんなふうに強引なスミレは見たことがない。
それほど、もう二度と自分も芹香も、あたしに関わりたくないんだろうな。


自業自得なのはわかってる。
でも、あたしだってこんなふうになりたかったわけじゃない。


きっと、あたしの気持ちをわかってくれる人なんていないんだ。


じわりと浮かんだ涙を、こぼれる前に慌てて拭った。