「なずなちゃん……」


何よ、その目は。何でそんな悲しそうな目を向けてくるのよ。


彩芽に悲しむ資格なんてない。
嘘だったとしても、蘭に言わされただけだったとしても、あたしを嫌いだと言ったことは事実には変わりないんだから。



「彩芽のことなんかもう知らない!! あたし達は最初から“友達”なんかじゃなかった。二度とあたしの前に現れないで!!」



必死に呼び止める彩芽に振り返ることなく、あたしは公園を飛び出した。


走りながら、涙がこぼれた。


『許して欲しいとは言わないから、私の気持ち だけはわかって欲しいの!』


彩芽に言われたことが、あたしの傷をずっとえ ぐっているように感じるほど、嫌に耳に残って いる。


ここ数日だけで、いろいろなことがありすぎて 、あたしの心はすでに容量オーバー。 彩芽の気持ちを受け入れるほどの隙間なんて、 悪いけどどこにもない。


蘭のことも、彩芽のことも、あたしにとっては 嫌な記憶でしかなかった。だから、トラウマと なったあの時の出来事に、今まで蓋をして極力 思い出さないようにしてきたというのに。


突然蒸し返されたと思ったら、“嘘だった”なんてあんまりだよ。