「卒業式の前日も、私がなずなちゃんに声をかけてたのを見てた蘭ちゃんが、私のことを試したんだと思う。教室のドアは閉まってたけどバタバタって廊下を走っていく音が聞こえて、もしかしたらって思ってたんだけど、やっぱり聞いてたんだね、なずなちゃん」
彩芽は、ブランコから立ち上がってあたしの前に立つと、その腰を90度に折り曲げて頭を下げてきた。
「だから、ずっと謝りたかったの。嫌いだなんて嘘なの。あの時、傷つけてしまってごめんなさい……。本当にごめんなさい……!」
“嘘なの”
“ごめんなさい”
今まで自分を責めて、そして今、こんなにも真剣に謝ってくれているのだから、許してあげてもいいんじゃないか。
そう客観的に考える自分の中に、静かに怒りを沸き上がらせる自分もいた。
今更、“嘘だった”なんて一言で片付けられて、それであたしに植え付けられたトラウマが消えるとでも本気で思っているのか、と。
彩芽がそう思って、今謝っているのなら、随分と都合のいい甘い考えだな、と。
中学のあの時、あたしは彩芽が、心ではあたしの味方でいてくれているって信じてた。
それを、たとえ嘘だったとしても、裏切られたことに変わりはない。
そのせいであたしは、“友達”が何なのか歪んだ方にしか捉えられなくなって、それで今、スミレと……。