その日の放課後。


椿くんがあたしを呼び止めて何かを言おうとしてたけど、ほっといてほしくて逃げるように学校をあとにした。


スミレはというと、芹香と楽しそうに話しながら一緒に帰っていた。


あたしのことなんて忘れてしまったかのように笑っているのを見ると、なんだかすごく悲しくて虚しくて、そしてどうしようもない寂しさに襲われる。


ため息をつきながらとぼとぼと重い足取りで帰っていると……。



「なずなちゃん……!」



後ろから声をかけられ、振り返った瞬間あたしは目を見開いた。


正直、今はちゃんと話せる気がしなくて、あまり関わりたくないと思う人物だった。



「あ、彩芽……」



前みたいに他人のふりでもしてしまおうかと思ったけど、彩芽に両腕を掴まれ、必死な顔で「話を聞いて」と言われてしまう。


「お願い。ちゃんと、なずなちゃんと話したいの。お願い……!」


あんなふうに拒絶したというのに、それでもあたしと話したいと言う彩芽。
そこまで言われたら、断りにくい。


「……わかった」


それでもあたしの声は相変わらず冷たい。


でも彩芽は、すごく嬉しそうに笑った。