「芹香ちゃん。あんな子にわざわざ挨拶する必要ないよ」
文字通り目の前が真っ白になってしまったあたしは、自分の耳を疑うという行為でしか冷静さを保てそうになかった。
今、聞こえてきた言葉が、スミレからは想像もできないような一言で衝撃的すぎて。
でも、やっと開けてきた視界の中に、明らかにあたしに怒りを向けたような目で睨んでくるスミレがいて、聞き間違いじゃなかったと自覚するしかない。
「え、あの、スミレ……?」
さすがの芹香も居たたまれないのか慌てていると、スミレは何事もなかったかのように英語のノートを机から取り出す。
「ねぇねぇ、それよりさ!今日芹香ちゃん当てられる日じゃない?課題終わってないなら教えてあげるよ」
あたしから話題をそらそうとしているのかはわからないけど、芹香の言葉を遮ってそんなことを言い出すスミレ。
いつもなら、こっちが頼まなきゃ勉強は教えてくれなかったというのに。
相当嫌われてしまったんだな、あたし……。