「春風さんは、彩芽さんのことがあったから、染色さんや八潮さんとの関係にすごく悩んでしまうんだと思う。でも、これからは俺でよければいつでも話聞くからさ」
椿くんのその言葉を聞いた途端、また目の奥か熱くなってきて。
気を抜けば、たくさんの人が行き交う駅のホームで泣いてしまいそうになった。
でも、椿くんの言葉に対する返事は涙じゃなくて、笑顔だと思ったから。
「ありがとう、椿くん!」
あたしの笑った顔を見て、椿くんが明らかに驚いた。
久しぶりにこんなふうに人に笑いかけたかもしれない。
スミレや芹香に見せるような作り笑いじゃない、心からの自然な笑顔だったと思う。
あたし、まだ笑えたんだ。
よかった……。本当に……。
ホームに滑り込んできた電車に乗り込み、あたしは窓越しに椿くんに手を振る。
「またね、春風さん」
優しく微笑んで、あたしに右手を振り返す椿くん。