あたしも釣られるように帰る準備を始めると……。


「駅まで一緒に帰ろう」


あたしのほうを振り返り、ふわりと笑ってそう言った椿くんに一瞬ドキッと心臓が鳴った。


「う、うん」


教室を出ても、部活をやっていた正統も皆帰ったらしく、しんと静まり返っている。


あたしと椿くんの足音と話す声。それから、あたしの胸のドキドキがやけに大きく響いたように感じた。




駅に着くと、乗る電車が違うにも関わらず、椿くんはホームまで見送りに来てくれた。


〈まもなく、1番線に〇〇駅行きの電車がまいります……〉


構内アナウンスが入り、もうすぐあたしの乗る電車がやって来る。


「春風さん」


ホームに並ぶベンチから立ち上がったあたしに、椿くんが呼びかけた。


「春風さんのこと、ちゃんと聞けてよかった。話してくれてありがとう」


「椿くん……」


あんな暗い話を聞かせてしまったのに、まさかお礼を言われるとは思ってなかった。