そういえば、雪くんは“友達”を裏切ってしまった側だったんだっけ。


そう考え始めると、雪くんの言葉だけでなく、中学の卒業式の日以来、彩芽に久しぶりに会った時のことも脳裏に蘇った。


『なずなちゃん、待って!お願い、話を聞いて……!』


あそこであたしが立ち止まっていたとしたら、彩芽はあたしに何を告げようとしていたのだろう。


椿くんや雪くんが言うように、謝ろうとしてくれてたのかな。


どうであれ、彩芽の一件のせいであたしは友達が信じられなくなった。今現在スミレ達との関係も良いとは言えないわけで。


だから、今更謝られても、何も変わりはしない。


でも、次また会った時は、話ぐらいは聞いてあげよう。


そう思った時、まるで見計らっていたかのようなタイミングで、最終下校時間を知らせる音楽が流れ始めた。


「……あ、そろそろ帰ろっか」


椿くんが、おもむろに帰り支度を始める。