当たり前じゃん。椿くんの言葉の本当の意味を知って、どうやって涙を止めろって言うの？


「はは、春風さんって……実は結構泣き虫な子だったんだね」


いつもの抑揚のない声じゃなくて、人間味のあるというか、穏やかな雰囲気を帯びた声で椿くんが言った。


「……っ、るさい……」


やっと喉から飛び出した言葉は、あまりにも可愛げのないものだったから。


ごめんなさい、ありがとう、そして。


椿くんはひとりじゃない。あたしがいる。
あたしがそばにいるから。


そんな思いを込めて、椿くんを強く強く抱きしめた。



「……ありがとう、春風さん」



震えた声で、椿くんが耳元で囁く。
もしかして、椿くんも泣いているのかな。


あたしに応えるかのように背中に回された手は、やっぱり温かくて心地が良くて。



「椿くん、あたしの昔の話も聞いて欲しい……」



「もちろん」という優しい返事を聞いて、あたしは初めて、自分の抱えていたトラウマを話した……。