でも、今は違う。


椿くんのそばにはもう、山茶花くんはいない。


それを知った今では、あの時のあれは、あたしを責める為の言葉じゃない。
「こんなことをしていたら自分と同じになってしまうよ」という、悲しくて優しい忠告にしか思えなくて。



「俺、あんな言い方しかできなくて、いっぱい傷つけたと思う。ごめんね」



謝らないで。


だって、椿くんがあたしに言った“嫌い”は、ただの優しい忠告で。
“嫌い”と言った回数分だけ、椿くんはあたしを助けようとしてくれていた。


椿くんは、ずっとあたしに優しくしてくれていた。それが少し不器用だっただけ。


だから、謝るのは、そのことに気付けなかったあたしのほうなんだよ。


そう言いたいのに、喉の奥が熱くて声が出てこない。


だから、代わりに首を大きく横に振って、椿くんの胸に飛び込んだ。


「春風さん?また泣いてる?」