“いなくなった”……確かに椿くんは、そう言った。


それって、どういう……。


「離れ離れになっちゃったの……?」


「……小学校を卒業した次の日に、あいつは親の仕事の都合で海外に引っ越したんだ。中学でも高校でも、ずっとサッカーやろうって話してたのに……」


「でも、それは……」


少し言いにくいから思わず濁してしまったけど、それは山茶花くんのせいじゃない。
親の仕事の都合なら仕方ないことだし、小学校を卒業したばかりの山茶花くんが、抗えるはずもない。


あたしが言いたいことを感じ取っていた椿くんは、「わかってるよ」と静かにつぶやいた。



「でも、俺には一切何も言わずに行ってしまったんだ。それどころか、卒業式の時も『中学でもよろしく』とか言いやがって……。どうせ約束を破るくせに……」


「椿くん……」


「卒業式の次の日、いつものようにサッカーの練習に行ったらあいつがいなくて、チームメイトから引っ越ししたことを聞いた。俺には言わなかったくせに、他の奴には話してた。それがどうしても許せなかった」



裏切られたような気分だった、と。



椿くんは、かすれた声で弱々しく言った。