あたしが笑っていた……?
やっぱり、高校に入学する前の学校見学の時に会った男子が、椿くんだったのかな。
「ねえ、春風さん。ちょっとだけ、俺の昔話を聞いてくれないかな」
椿くんは、あたしの涙を指ですくうようにして拭うと、あたしの手を引いて誰もいない教室へと連れてきた。
椿くんの机の横にかけてあったバッグ。
彼はその中から、1枚の写真を取り出した。
「春風さんも、1回見たことあるよね」
そう言われながら差し出された写真は、あたしが開けっ放しだった椿くんのバッグを落とした時に拾った、あの二人組の少年の写真。
小学生ぐらいの子だろうか。サッカーボールを持っていて、二人共仲良さそうで、楽しそうな笑顔を浮かべている。
「これって、もしかして椿くん?」
「うん、そう」
その内の片方の子を指さして問うと、椿くんは少し照れくさそうに頭を掻きながら答えた。