「……何しに来たの、あんた」
低い声で、迷惑そうに言ってきた。
「あ、いや……」
つい、見入ってしまった。
サッカーボールを見事に足で操るその姿に。
「ごめん、椿くん」
彼は、椿冬都(つばき ふゆと)。
同じクラスの椿くんは、クラスで特別目立つというわけではないけど、みんなとまんべんなく話をするという印象の人。
あたしは話したことがないからそんなによくは知らないけど、休み時間になると決まってどこかに行ってしまって、特定の誰かとつるんでいるのは見たことがない。
もしかしたら、いつも休み時間の度にここへ来ては、サッカーをしていたのかもしれない。
「ごめんね、邪魔して」
そう言って、立ち去ろうとしたあたしだったけど、椿くんは呼び止めるかのように「あのさ」と、つぶやいた。