「そういえばなずなちゃん、今日の英語の課題、ちゃんとやってきた?」
「……やってない」
スミレが、自分の席からあたしを呼んで、そんなことを聞いてきた。
人のいない教室はガランとしていて、離れたところからでもよく響く。
「私もやってないから、これからスミレに教わるつもりなんだ〜」
頭をかいておどけてみせる芹香に、あたしは冷めた様子で「ふーん」とだけ答える。
「なずなちゃん、今日当たる日だよね?課題まだ終わってないなら一緒にやろう」
今日の日付は、あたしの出席番号と同じ数字の日。当てられることはほぼ確定だけど、スミレと芹香のところに“入れてもらう”のはあたしのプライドが許さなかった。
「いい。今日は自分でやる」
本当なら、“入れてもらう”側なのは芹香の方なのに。あたしは“入れてあげる”側なのに。
どうして、芹香が当然のように、あたしよりも先にスミレと一緒いるの。