「……」


こんなところで立ち止まって、ずつと盗み聞きしていたところで、いい事なんて何もない。中学の時と同じことになるのが目に見えている。


――ガラッ。


気合いを入れるように手に力を込めて、あたしは勢い良くドアを開けた。


入口付近の席のスミレと芹香は、慌ててバサバサと何かを机の中に隠したあと、何事もなかったかのように挨拶をしてくる。


「おはよ〜!なずな!」


「な、なずなちゃん、おはよう」


明らかに驚いているスミレ。芹香も、笑顔を向けつつも隠しきれてない感じがする。


「……おはよう」


それをわかっていながらも、あたしは何も気づかなかったふりをして、挨拶を返す。
それでも、気にはなるから聞いてみた。


「さっき、何か隠してたみたいだったけど……どうしたの?」


「「えっ!?」」


すると、この反応。
スミレだけでなく、芹香までもが驚きのあまり声を上げた。