屋上の重い両扉。入学してから初めて訪れる屋上に、少しだけドキドキする。


「うん……っしょ」


ゆっくりと扉を開けると、真っ先に飛び込んだのはオレンジ色……沈みゆく夕日。


その次に見えたのは、壁に向かって飛んでいく白と黒の丸いもの。


あれは……サッカーボール?


そして、そのサッカーボールが壁から跳ね返っていく先にいたのは、1人の男子生徒だった。


あの人……確か同じクラスの……。


その人は、戻ってきたボールをまた壁に向かって蹴り出す。


そして、跳ね返ってきたボールをまた壁に。


サッカー、やる人なんだぁ……。


少し長めの茶髪をなびかせて、同じ場所にボールを蹴る。


しばらく、それを繰り返している彼を見ていると、その彼は突然ボールを足で止め、あたしのほうを振り返った。