何それ。いつあたしが、スミレ達を信じようとしてたのよ。言っている意味がわからない。
こうやってあたしをむかつかせる言葉を投げつけてきたり、そうかと思えば言いすぎたって謝ってきたり。椿くんが何をしたいのか、あたしには全くわからなかった。
椿くんだって、あたしのことなんて何も知らないくせに。わかってないくせに。
イライラして顔も見たくなくて、あたしは椿くんから目を逸らす。
「……自分の本当の気持ちから目を背けて、噓を言う奴も、俺は嫌いだ」
椿くんは、そう残して教室をあとにした。
独り、教室に残されたあたしは、最終下校時間を知らせる音楽が流れる中、ぼんやりと思い出していた。
“俺、あんたのこと、嫌いだわ”
“嫌い。春風さんみたいな人間が”
“そばにいてくれる友達がいるのに、そいつを大切にしないところ、本当に嫌いだよ”
芹香が転入してきてすぐの頃に言われた、“嫌い”という言葉の数々。
椿くんと隣の席になって、謝ってもらえて、少しでも距離が縮まったかも、なんて思っていた自分が恥ずかしくなった。
椿くんは、最初からずっと、あたしのことが嫌いだったのに。