『なずなはスミレちゃんのことも、芹香ちゃん のことも大好きなんだよな』


雪くんの言葉が、良すぎるぐらいのタイミングで頭によぎった。


「違う!そんなわけない……!」


だから、とっさに大きな声をあげてしまった。


大好きなんかじゃない。そんな感情は、“友達”には持ち合わるものじゃない。特に芹香なんてただの邪魔者なんだから。


この胸の苦しさが何なのかはわからないけど、嬉しいなんて、そんな素敵な感情のせいじゃないことだけはわかる。


違う……絶対に違う……。


首を横に振って、必死すぎるというほどに否定するあたし。
そんなあたしを見て、椿くんは何故かため息をつく。


そして、さっきまであたしの涙を拭ってくれていたはずの優しい椿くんは、また前みたいに冷たい目で厳しい言葉を放った。


「あんた、トラウマに縛られてるふりして、本当はただ、また友達を信じようとしてる馬鹿な自分を認めたくないだけじゃないの」