「じゃあ、俺はもう帰るね」


原因のわからない胸の苦しさに顔を歪ませていると、椿くんがおもむろに立ち上がる。


「うん……。じゃあ……」


椿くんは、「水分補給しとけよ」と飲み物をあたしの前に置いて、教室の出入口のドアに手を掛ける。


そのままドアを開けて帰るかと思いきや、椿くんは一度立ち止まり、あたしのほうを振り返った。



「春風さん。嬉しかったんじゃない?自分が必要とされていて」



そして、そんな質問をぶつけてきた。


嬉しかった?あたしが?
椿くんは何を言っているんだろう。


そんなこと、あるわけがない。
何回も言ってるじゃないか、“友達”は自分が独りぼっちにならない為の存在で。
あたしにとってはスミレがそれで、そのスミレを取ろうとする芹香は邪魔者。


あたしは、芹香があたしがいないと意味がないなんて言う理由も、スミレが今度は3人でなんて言う理由も理解できない。


だから、嬉しいなんて、そんな……。