だから、スミレと芹香を引き離す為なら、どんなに汚い手を使ってもいいと思っていたのに、どうしてあたしは今日身を引くような真似をして、挙げ句の果てにこんなところで涙を流しているのだろう。
「春風さん」
自分がわからなくて頭を抱えていると、椿くんがあたしの名前を優しく呼んだ。
「携帯、見てみ」
「……?」
「着信きてたっぽいよ」
机に置いたままだったスマホ。椿くんの言う通り、チカチカとLINEや電話の通知を知らせるランプが光っている。
確認すると、スミレと芹香から何通かメッセージが届いていた。
急用ができた、というあたしの嘘に対しての返事だ。
【なずなちゃん、いきなり居なくなっちゃったからびっくりしたよ~。用事があって先に帰ったんならよかったけど、心配したんだよ!】
【私たちも、なずなが帰ってからすぐに解散したんだ。私は3人で遊びたかったから、なずなもいなきゃ意味ないからさ】
「……!」
あたしがいなきゃ、意味がない……。
そんなことを言われたのは初めてだった。