「だから、カルシウムはいらないってば」


「じゃあ、普通の水にしとく?水分補給はしといたほうがいいんじゃない?」


「水分補給?」


また、イライラにはカルシウムがいいから、という理由だけで牛乳を薦められているんだと思っていたけど、それだけじゃなかったらしい。


意味が良くわからなくて首を傾げると、それまで興味なさげに宙をさまよっていた椿くんの視線が、突然まっすぐにこちらに向けられた。


そして椿くんは、まるで壊れ物でも扱うかのように優しく、あたしの頬を拭うように撫でてきた。


「な、何!?」


こんなこと、異性にされたことなんかなくて、触れられた頬に熱が帯びるのを感じる。


なるべく平静を装おうとするあたしとは対照的に、椿くんはいつもの無表情を崩すことはない。


「目から無駄に水分を出してたよ」


「え……」