授業が始まり、予想通り先生に当てられるはめになったけど、スミレのおかげで大丈夫だった。
やっぱり、スミレを“友達”に選んだのは正解だったと思う。
独りぼっちにならなくて済むうえに、課題まで写させてもらえるなんて。
一石二鳥。利用価値ありまくり。
周りだって、友達が文句を言いながらも課題の答えを写させてあげてる、というよくある光景としか見られない。
スミレのおかげで、あたしはそれなりに楽しく毎日を過ごせていた。
たぶん、もう中学の二の舞になることはないだろう。
表面上ニコニコとして、スミレと他愛ない話をしていれば、何も心配はいらない。
大丈夫。この調子でいけば、平穏に1年を終えられる。
「あたし、スミレと“友達”になれて良かったなー」
課題を写させてもらったお礼に買ったジュースを差し出して、スミレに言った。
それを聞いたスミレは、パァっと表情を明るくさせて。
「わ、私も!なずなちゃんに声をかけてもらったおかげで、毎日とっても楽しいよ!」
曇りのない彼女の笑顔。
利用しているというのに、あたしは良心が痛むどころか、心からの笑顔を返した。