あたしは、そのことをふまえて、とある女子に目をつけた。


染色スミレ(そめいろ すみれ)。


長い髪を耳の下で2つ結びにしていているおとなしそうな子。


入学してから1ヶ月ほどが経った今でも、まだ特定の友達はいないらしく、いつも自分の席で読書をしている。


きっと、彼女も独りぼっちが嫌なはず。


だって、楽しそうに話している女子グループを、たまにうらやましそうな目で見てるから。


あたしが声をかければ、きっと喜ぶに違いない。


独りぼっちでいたところに声をかけてくれた人がいたとなれば、その人を裏切ることなんて、まずないだろう。


……よし、あの子にしよう。


あたしの“友達”になる子。


「染色さん、だよね?嫌じゃなかったら、あたしの話聞いてくれない?」


声をかけると、スミレは驚いて目を丸くしたあと、頬を赤くして、首を縦に振った。



「“友達”になろうよ!」



もう、絶対。
他の人に取られたりなんかしない。