大和くんに"もうやめて"と言ったなんて、信じられない。話を聞いている限り、とても、優しくて、ふたりは仲がよかったんだろうって思うのに。


「……よく、わかんないよね」

「なにが?」

「仲がよかったって、思っててもさ。なにがあるかわかんないなあって……いっぱい話してたって、あっさり他人を信じてしまったり」


 翔子と私は、幼稚園から一緒だった。
 毎日いっしょに遊んでいた。お互いの家に行き来して、親友だって思っていた。

 一緒に学校に行って、帰って、いろんな場所にふたりで遊びに行って、それでも電話だってたくさんした。毎日よくそんなに話すことがあるなってくらい話をしていた。


「仲がいいと思ってた子から無視されるのだけは、さすがに堪えたなあ」


 まさか、翔子までそんなことをするなんてって思った。
 そんな気持ちもすぐに怒りと意地に変わって、私から仲直りしようとも思わなかったけれど。


「お前ずっと思ってたんだけど」

「ん?」

「お前本当に、いじめられてたのか? あ、いや、この言葉はおかしいな。いじめられたことに、傷ついてんのか?」


 まっすぐに見つめられて、息が一瞬喉に詰まってひゅ、と音が鳴った。


「な、なんで?」

「なんとなく? いじめられて、人がいなくなったって言う割に、友達と一緒にいることに抵抗もねえし、特別大事にしてる感じもねえなあって思って」


 そんなふうに、見えていたのか。
 だけど、ああ、そうかも、と自分で思ってしまった。

 とはいえ、どう返事をしようかと考えているとホールの女の子が手にパスタを持ってテーブルにやってきた。

 私の頼んだカルボナーラと、大和くんの頼んだ大盛りのペペロンチーノが「おまたせしました」という言葉と同時に目の前に並んだ。


「俺も、気にしなかったからな」

「でも、人がいなくなってしまうのは、さみしかったでしょ?」

「……まあな」


 話しながらフォークを手にして大和くんが豪快にパスタを口に運んでいく。
 私はお腹は空いているけれど、言葉が喉に支えていて、うまく食べれない。