「早かったな」
「まあ、報告するだけだしね」
席にはいつのまにかアイスティーが置かれていた。
ドリンクバーを注文していたから、大和くんが私の分も入れてきてくれたんだろう。
ありがとう、と言うと「別に」とちょっと恥ずかしそうに、珍しく視線を逸らされた。
「大和くんは家に連絡しなくていいの?」
「さっきメールした。飯作ったのにアホって言われたけどしらねえ」
お母さんとメールとかするんだ。
話を聞いていると、大和くんのお母さんは結構パワフルな感じだけれど、あんまりイメージできないなあ。
なんか、美人でしっかりしてそうな感じだ。
「でも、最後に絵文字で笑ってた」
「え?」
意味がわからずに首を傾げたけれど、すぐに理解できた。
お母さんからのメールのことか。怒ってた内容だけれど、嬉しそうでもあった、のかな?
「俺が友達と出かけるとか、中学以来だからな」
そうか。
言われてみれば……中学のときの事件からずっと避けられてるから……。
「その、昔のその友達とは、一緒に出かけてたの?」
「まあ、中学だからこんなところはこねーけどな。コンビニ行ったり、あいつの家に行ったり。俺んちに来たことも、あったっけな? まあ、そのときは他にも友だちがいたけど」
どんな、友だちだったんだろう。
いじめられていたらしいけれど、きっと、すごくいい子だったんじゃないかと思う。
だって、大和くんは本当に懐しそうに、微笑んでいるから。
「小学校の友達はいるけどな。それでも中学違うしなあ。会ったら話するし、遊ぶことがないこともねえか」
「どんな子だったの? その、引越した男の子」
口にしてから、あんまり言いたくないかな、と不安に思った。けれど大和くんは気にした様子もなく「んー」と思い出すように視線を天井に向ける。
「なんっつーか。子犬みたいなやつだったなあ」
「子犬?」
「そう。笑うとすげえ嬉しそうで、からかうと顔を真赤にさせて必死にしゃべるんだ。運動音痴で頭も悪かったけど、俺の知らないことすげえ知ってた。ゲームもすげえ詳しかったし、パソコンとか当時からよく触ってたっけな。あと、動物とかも詳しかった」
「へえ」
「ああいうタイプと友だちになるって自分でも意外だったけどな」
本当に優しい子だったんだろうなあ。