「あたしもぉー! やるやる! おもしろそうじゃん」

「いいじゃねえか。オレももちろんやってやるよ!」


 先輩たちが楽しそうに声を上げて立ち上がる。


「ぼく、も」


 すると、弱々しいけれどはっきりとした意志を持って、立森先輩が言った。


「……な、なんで」

「ぼくだって、気になるんだ……ぼくも、一緒にやりたい」


 驚いた様子で引きとめようとする鷲尾先輩に、彼は真面目な顔で答えた。


「だったら、アタシだって。突き飛ばした侵入者の顔をちゃんと見ないとすっきりしないわね」

「お前はオレを疑っただろうが」

「だってあんた以外だとおもったんだもの。違うなら見つけ出したいわよ」


 榊先輩の堂々とした言い分に、浜岸先輩は舌打ちをした。けれど、表情はそんなに怒っているようには見えない。


「きみらだけじゃ心配だから、ボクも参加するよ」

「えっらそーに。ビビってるんじゃないのー?」

「し、失礼だな! 本当にきみは!」

「うはは! なにそれヲタクっぽい!」


 七瀬先輩は、蒔田先輩にケラケラと笑われて顔を真赤に染めた。


「あなたね、そういうところよ、無神経なの」

「えー? コミュニケーションじゃないー。なんでだめなの榊ちゃんってばー」


 榊先輩の怪訝な顔にも、蒔田先輩はあっけらかんと返す。
 突然"ちゃん”付で呼ばれたからか、榊先輩もちょっと驚いて「な、なによ!」とよくわからない返事をしている。

 できれば……みんなでできたらいいな。

 そんな気持ちで柿本さんに視線を向けると、不安げに揺れる瞳とぶつかった。

 一瞬なにかを言いかけるように口を開いたけれど、すぐに閉じて私から視線をそらす。そして、鷲尾先輩に近づいていった。


「……せんぱい」

「うん」


 彼女に呼びかけられて、鷲尾先輩は少し考える。
 彼の言葉を待つように、みんななにも言わずに見つめた。


「ここで、ぼくが逃げたら……ダメだよな」


 苦笑をこぼしながら、そう呟いて、「一緒にやるよ」と言った。