「捕まえてやればいいんだろ、そいつを!」
浜岸先輩が疑われることにとうとうブチ切れたらしく、今まで以上の大きな声を出して立ち上がった。その勢いで椅子が盛大に倒れる。その音もうるさく響く。
「な、なにを」
「勝手に犯人扱いされちゃこっちも気分が悪いんだよ」
「いや、でも……」
「ごちゃごちゃうっせーなあ。だいたいお前は仲間が怪我してんのに悔しくねえのかよ! クーデター起こそうとしたんだろお前は! だったらこのくらいやってみせろよ! 口だけかお前」
「それとこれとは……」
「前からお前のことうぜえって思ってたけど、こうして余計に思うわ、マジでうざいお前。出来ねえいいわけばっかりじゃねえか。すぐにできない理由探しやがって」
鷲尾先輩の顔が曇った。
私でもはっきりわかるくらいに、瞳が揺れる。
「だって……」
「……——わ、私も手伝います!」
気がつくと、右手を突き上げてそう叫んでいた。
みんなの視線が私に集中する。
また考えなしに口が動いてしまったことに、しまった、と思った。けれど、うん、と小さく自分につぶやいて顔を上げる。
「私も、捕まえます……!」
「な、なんで、きみまで」
「気になるから、です。犯人が、ではなくて、どうしてこんなことをしたのか、気になるから。そして、放っておけないから。だから」
鷲尾先輩の視線はまだ自信なさげに揺れていた。
でも、私をちゃんと見て、耳を傾けてくれている。
「だから、みんなで、しませんか?」
「ぼくは反対だ」
意を決して告げた言葉は、すぐに会長によって否定された。
「どんな奴かもわからないのに、そんなのは危険だ。もう怪我までしてるんだから警察に届けるべきだ。それが無理でもせめて先生たちには報告した方がいい」
「俺も一緒に手伝ってやるよ」
会長の言葉を無視するように、大和くんが言う。
「話聞いてる? なにかあったらどうするんだよ」
「お前が気にしてんのは、"なにかあったら自分が困る"だけだろ。お前のせいにはしねーよ。忘れろ」
「そんなことできるわけないだろ? そもそも捕まえてどうするんだ」
「……別に。こいつの言うように俺も気になるだけだ」
呆れる会長に、大和くんは淡々と話を続けた。
それでも、一緒にやってくれるんだと思うと、さっきよりもやる気が出てきてしまう。