「いじめてた……人も、この学校ってことよ、ね? その人は、まだ……?」


 同じ学年なんじゃないだろうか。
 何人くらいいたのかわからないけれど、その人達は……どう思っているんだろう。

 ウワサがウソで、真実はなにかを、その人達は知っているはず。


「聞かない方がいいと思うけど」

「……どういう、こと?」

「何人くらいいたのかよくわかんねえ。いじめられたら、他のやつも見て見ぬふりだし感化される奴もいたしな。……主にやってたのは、3人、かな」


 そこまで言って、大和くんは言葉を詰まらせた。
 言いにくい、ことなんだろう。


「ひとりは、居心地が悪くなったのかしらねえけど、外部受験して別の学校に行った。あとのふたりはのうのうと学校で過ごしてるよ。その内のひとりが」


 嫌な、予感がした。
 大和くんが、私の反応を確かめるように、じっとまっすぐに見つめてくる。とても、真剣な眼差しで。



「飯山」



 ガツン、と鈍器が頭上から降って来て私の脳を揺さぶった。

 ……まさか、ほんとに、飯山くんが……。

 呆然とする私を見て、大和くんは「驚くだろ」と笑った。いびつな笑顔で、なにも言えなくなってしまう。


「だから、お前のこともよく見てた。あいつらと仲よくなるなんてみんなろくでもねえんだろうなって思ってたけど、お前バカみたいに挨拶してくるんだもんな」


 だから、私のことを覚えていてくれたんだ。


「変な女だなって思ってた」


 優しい笑顔を見せられると、胸がぎゅうってなる。
 嬉しいのか苦しいのかわからない。

 そんな笑顔を見せてくれることが嬉しい。だけど、今までどんな気持ちで過ごしていたんだろう、どんなことを思って私と言葉を交わしてくれていたんだろう。


「今はなんともねーしどうでもいいけどな。飯山もどうでもいいよ」

「でも……! ウワサは……」

「同じ学年で、そのウワサが本当だって信じてる奴は半分もいねーんじゃねえの? 外部組が増えたから半分以上信じてるか。まあ、内部のやつの半分くらいは、知ってるだろ」


 ……それって。みんな、真実を知ってて……あのウワサを口にしているってこと?