「どうせ、今まで自分が傷つけられてきたんだからって考えてねえんだろ」

「もう、やめてくれ……」


 いつの間にか、大和くんの前に、鷲尾先輩が今にも泣きそうな顔で立っていた。


「もう、やめるよ」

「はあ!? お前なに言ってんだ!」

「もううんざりだよ! 結局……なにも変わらない! こんな……答えのないみんなが傷つくだけのケンカするくらいなら、もう、終わりにするしかないじゃないか!」


 浜岸先輩に、鷲尾先輩が叫んだ。


「結局、僕らは意見が合わないんだよ、根本的に。相容れないんだ。僕らですら、変えられないのに、校内のみんなを変えれるはずもない」

「……お前は、オレを変えようとしたのかよ、一度でも。自分を変えようとしたのかよ!」

「浜岸くんには、わからないよ。僕にも浜岸くんの気持ちはわからない。だから、無理なんだよ」


 力なく笑いかけると、浜岸先輩は言葉を失ったかのようになにも言わなくなり、それを理解とみなしたのか、鷲尾先輩はゆっくりとした足取りで教室を出て行った。

 それに続いて、柿本先輩も、榊先輩も、七瀬先輩も。
 最後に、おろおろしながら立森先輩も、出て行ってしまった。


「……結局これで終わりってことかな」

「お前、ほんとになんで来たんだよ」


 呆れながら呟いた会長に、大和くんが睨みつけながら口にした。


「これでも……どうにかしないと、と思ってるんだよ。この学校のことも、生徒のことも。きみのことも」

「余計なお世話だよ。お前がいるからこじれたって自覚あんのかよ。お前何回人のことをバカにすりゃ気が済むんだよ」

「……そんなつもりは、ないんだけどなあ」


 途中からなんの話をしているのかはわからなかった。
 けれど、やっぱりこのふたりはなんらかの関係があったんだろう。