「どうせ、放送室に来たのだって、助けてあげようと思っていたんでしょ? 自分がいじめられているわけでもないのに、ヒーロー気取りで」
「か、柿本」
「さっきもよ、せんぱいを守ったつもり? せんぱいが今どんな顔していたか見た? いつもあなたはそう。自分のことしか考えてない。偽善者よ、ただの。いじめをする人よりもたちが悪い」
彼女の目は、私を憎んでいた。
今まで、柿本さんがつらい目に会っているのかと思うようなことは何度もあった。目に付けばいつも、手を差し伸べた記憶もある。
それが、こんなにも憎まれることになるなんて、思ってなかった。
だけど、私は彼女の言うように、彼女の顔を見なかったし、今も、鷲尾先輩の顔を見ることもなかった。
鷲尾先輩を見ると、バツが悪そうな顔をしている。
よく考えれば、そうかもしれない。
年下の、しかも女の私に、一見守られたような感じになっただろう。そんなこと、考えたこともなかった。
しかも、浜岸先輩と、あんな会話をした後だったのに。
私は、鷲尾先輩を、惨めにしてしまったの、かもしれない。
「ご、ごめ……」
「黙って聞いてりゃ、どいつもこいつも、自分のことしか考えてないよな」
泣くな、泣くな。
そう思いながらスカートを握りしめて俯きながら謝ろうとすると、今までずっと、なにも言わなかった大和くんが、呆れるような口調で話し始めた。
「いじめとか胸糞悪いし、どんな理由があろうとお前らが人にけなさていい理由にはなんねーと思う。いじめられて、傷ついたとか、守られて惨めだとか、そりゃそうだよな。お前ら悪くねーもんな。けど」
「……けど、なに?」
「だからって、人を傷つけていい理由にはなんねーだろ」
喉がぎゅうっと締め付けられて、涙が溢れそうになった。
「自分がもう傷つきたくねえから、人を傷つけてでも自分を守ろうって? だったらお前にこいつを責める資格はねえだろ。俺からすれば、他人を守ろうとして結果傷つけてしまう奴のほうがいいけどな」
「じ、自覚なく人を傷つけるほうが……罪じゃない!」
「じゃあお前は、お前も、お前も、人を傷つける言葉発してるって自覚あったのかよ」
大和くんは、柿本さん、榊先輩、七瀬先輩を順番に指さした。
みんな驚いた顔をしてから、さっと目をそらす。