「おまけに成績もそんなよくねーからな。この学校じゃターゲットにされるんだろ。あほらしい」
こうして大和くんの口から聞くと、いろんなことがおかしいんだと思える。
知っていたはずなのに、今更そんなことを感じるのは、今まで耳をふさいで目を閉じていたからだろう。
「お前だけじゃねえだろ、多分」
「……そっか。ありがと」
大和くんの、そっけないけれど私を気遣ってくれるような言葉ほほっとすると同時にうれしくて、笑顔で答える。彼はかすかに笑ってまたジュースを飲んだ。
あとで、柿本さんと話してみようかな。
ちょっとずつ、仲よくなれたらいいな。
大和くんと仲よくなれたみたいに。
「そういえば、大和くんも学校来るの早かったね」
「家にいたらおかんに掃除やら買い物やら手伝わされるから逃げてきた」
「ぶ、は!」
想像できない姿を想像して、思わず笑ってしまった。
仲いいんだろうなあ。「なに笑ってんだ」と怒られたけれど、その顔が恥ずかしそうにも見えて余計に笑ってしまった。
ふたりでのんびりと話しながら時間を過ごして、「行くか」と大和くんが腰を上げて私も一緒に部室を出た。
出るときも、大和くんが先で、私が後。
私に差し伸べてくれるその手を握って、階段を渡った。
「みんな、いるかな」
「さあな」
今日はどうなってしまうんだろう。
せっかくこうして立ち上がったのだから、このまま終わりになんてしたくないな。
放送室は鍵が開いていたけれど誰もいなかった。
ふたりで顔を見合わせてからなにも言わずに生徒会室に向かう。昨日の教室には、誰かいるかもしれない。
なんか、緊張してくる。
スーハーとこっそり深呼吸をしながら歩いていると、どこかから声が響いた。
はっきり聞こえたわけじゃないけれど、誰かの大きな声。
再び大和くんと顔を合わせて、さっきよりも速度を上げて生徒会室に向かった。