「でも放送部よりマシじゃない」

「まあ、たしかに」


 放送部は委員会の中で一番仕事が多くてみんな嫌がるらしい。
 毎日のお昼放送に、校内で流すビデオも。もちろん体育祭や文化祭も仕事ばかりだとか。

 そう言われると確かにマシだ。夏休み前と冬休み前の休みだけしかないし。

 でも他の委員は年に3回の集まりくらいで済むっていうんだからやっぱり貧乏くじを引いたとしか思えない。


「委員会もあるし、順位の張出しもあるし、あーもうやだー!」

「でも、輝、一学期の美術では10番以内に入ってたじゃないー」

「……そうだけど……」


 確かに絵がそこそこ描けるのは唯一の取り柄だけど、美術よりも英語で10番以内のほうがいいなぁ、私。
 もう、絵が上手であろうと下手であろうと、私には関係ないもの。


「よ。なに騒いでんのお前ら」


 ぽんっと背中を叩かれて、私と茗子の相田から飯山(いのやま)くんが顔を出してきた。

 あかるい茶色の髪の毛が、太陽の光で金色にも見える。
 くりっと大きな瞳で私を茗子を交互に見てから、にっと白い歯を見せて笑った。


「おはー、イノ。輝が順位張り出しと美化委員会に凹んでるところ」

「あー輝って美化委員だったんだ。ご愁傷様ー」

「ひどーい!」


 ケラケラと笑いながら、茗子の隣に並んだ飯山くんに頬をふくらませた。
 隣に並ばれて、ちょっと嬉しそうな茗子に、微笑ましく感じる。

 ……絶対、茗子って飯山くんが好きだと思う。
 ただ、みんなで問い詰めても認めない。素直になればいいのになあ。

 明るくって、ムードメーカーな飯山くん。背も高いし、顔もまあ、かっこいい。サッカー部でも期待のエースだとかなんとか。

 そんな彼と可愛くて目立つ茗子なら、すっごくお似合いだと思うんだけどなあ。同じ内部組ですごい仲いいし。

 飯山くんも、茗子に気があると思う。
 
 彼の場合は誰とでも仲よく付き合うから、なんとなくそう思う、ってくらいだけど。誰にでもにこにこしているのはすごいと思う。誰かをバカにしているところも見たことがない。

 じいっとふたりが話しているのを見ていると、まだ落ち込んでいると思われたんだろう。茗子が苦笑を零しながら「ほら、元気だして」と笑った。


「休憩時間に出そうなところの問題出してあげるよ!」

「まじで!? 茗子ー!! 大好き!」

「よっしゃ、じゃあ、終わったらパーッとカラオケでも行こうぜ」


 暑い中、茗子にぎゅうっと抱きついて、飯山くんの誘いにふたりして「行く!」と返事をした。