むっとした表情で大和くんを見ると、意地悪なほほえみを向けられて「じゃあどう思うんだよ」と促された。
言われてから、「んー」と唸りながら考えた。
鷲尾先輩が堂々と仕切ってくれればこんなことにはならなかったのにな、と思う。
もうちょっと、頑張って欲しいなーって。あの放送の勢いとか、昨日の真剣な眼差しはなんだったんだよーって、思う。
でも。
人と人は同じように動けないってことを私は知っている。
戦い方が違う人もいる。私たちができることができないからと言って、そこに腹を立てるのは間違ってるかもしれない。方法が違うだけで、戦ってないわけじゃないもの。
あの少年は、それを私に教えてくれた。
「難しいよね」
「なんだそれ」
つぶやいた言葉に、大和くんは呆れたように返した。
確かに返事にはなってなかった。
「大和くんにできることが、みんなもできるってわけじゃないんだよ」
「だから? そんなことくらいわかってんだよ。あれだけ大口叩いて俺らを集めたくせに、すぐにぶれるっておかしーだろ。お前だってだからあんとき先も考えず大声出したんだろーが」
「……そうだけど」
「いまいちまだあの鷲尾センパイとやらがなにしてえのかわかんねーんだよなあ。いじめをなくしてえなら、まずお前がいじめられてることをどうにかしろよな」
正論すぎてなにもいえない。
私が不安に思っているのも、大和くんと同じような気持ちを抱いているからだとも、思うし。
踏み出したものの、その場で足踏みだけをしている、そんな感じだもの。
あの放送を流したのが同一人物だとは正直思えない。
今日言ったように“いじめをなくしたい”という気持ちで、行動したのであれば……どうして今更、立ち止まるんだろう。
一度決意して行動したのであれば、その決意を持続して欲しい。
些細な事が、予想外のことがあるだけで揺れられるのは、困る。
私は、あの教室に足を踏み入れた時点で、覚悟をしたっていうのに。
みんな、そうなんじゃないの?
「ねえ、大和くんは、鷲尾先輩と同じ気持ち?」
「俺があの放送を聞いて参加した理由のこと言ってるんなら、違うな」
あっさりと否定されてしまった。
でも、そうかな、と思っていたから驚きはしない。