「お前考えてから話せよ」


 ふたりで教室を出てからしばらくして大和くんが私に言った。
 なにのことを話しているのか、すぐにわかって恥ずかしくなる。

 
「結構勢いで話すんだなお前」

「……だって……つい」

「教室で見てるときは事なかれ主義なのかと思ってたけど」


 それは……そう、かもしれない。
 いや、あえてそう見えるようにそう思われるように、そう振る舞っていたからだけれど。

 だけど、ちくりと胸が痛んだ。
 客観的に見た私は、やっぱりそんなイメージなのかと思い知らされる。


「お前くらいじゃないか? 外部組で飯山たちと仲良くしてるの」

「飯山くん? でも、他の内部の友達も今年初めて一緒になって仲よくなったーって子もいるし、関係ないんじゃないかな」


 ふーん、とかすかな返事が聞こえてきた。


「結構、クラスのこと見てたんだね」

「……どういう意味だよ。でも、まあ、あいつは中学のとき同じクラスだったから。他のやつはしらねえけど。顔を知ってるくらい」

「へえー」


 茗子も大和くんと話すと心配してくれたけれど、いつも明るい飯山くんも大和くんのことになると、真剣な顔をしていたのは……昔一緒のクラスでよく知ってるから、とかなのかな。

 一緒のクラスだったなんてこと初めて知ったなあ。


「掃除するか。えーっと、どこだっけ」

「うん」


 ぼんやり考えていると、大和くんは背を伸ばしてめんどくさそうにため息をついた。


「そういや……あいつなんできたんだか」


 心底嫌そうにつぶやかれた台詞は、誰のことを指しているのかすぐにわかった。

 会長のことだろう。

 大和くんが、どうしてそんなにあの人を嫌っているのかはわからないけれど、なにかあったんだろうな。なんとなく気が合わない、という理由だけとは思えない。


「……終業式にクーデターとか、本当にできるのかな」


 こんな調子で。
 話だってなにも進んでない。集まったところで毎日ぐだぐだで終わるだけ。


「このままじゃできねーんじゃねえ? 鷲尾とか言うセンパイにまんまとだまされた」

「だまされた、とまでは思わないけど」

「事なかれ主義は考えも優しいな」


 とげのある言い方にいらっとしてしまう。
 そんなふうに言わなくてもいいじゃない……。