なにばかみたいに声を出してしまったんだろう。私だけがそう思っていたんだ。勝手に感じて、勝手に行動を起こして、またそのやり方や言い方を間違えてしまったんだ。
「あなたは、いつも、そう」
「……え?」
隣から小さな声が聞こえてきて、ふと視線を動かす。
私の隣には柿本さんが座っていて、彼女はまっすぐに前を見ていただけだった。
……私に、話しかけた? それとも、聞き間違い?
じっと見つめていると、そっと覗き見るように私に視線を送ってきた。思わずビクリと身体を揺らしてしまう。
柿本さんはすぐに、また前を見てしまった。
「俺、委員会あるんで帰ります」
がたんと大きな音を立てて、大和くんが席を立った。
視線は会長ではなく鷲尾先輩を見つめている。
「話の途中なんだけどなー」
「お前の話なんて聞きたくねえんだよ。俺はお前のやり方には今も納得してねえ」
だから、と大和くんの声が聞こえた。けれどそれ以上なにもいわず鞄を手にする。
ちらりと私をみるその視線から、“おい行くぞ”と聞こえてきた。
「センパイ」
慌てて私も鞄を手にすると、足を止めた大和くんがくるりと振り返って鷲尾先輩を呼ぶ。
鷲尾先輩は一瞬体をふるわせてから、顔を上げた。
「あんたがそんなんだとこっちも萎えるっすけど。やってることと思ってることちぐはぐすぎんじゃねえっすか? 昨日といい今日といいいい加減にしてくんないっすかね」
うわああああああ……。
聞いた瞬間血の気が引くような冷たい口調に、その内容。
まっすぐすぎる台詞。昨日も思ったけど……大和くんはオブラートに包むことができないんだろう。
でも、だからこそ。
その言葉がどれだけ本気か。そしてその言葉に込められた大和くんの気持ちもすっと伝わってくるような気がする。
昨日は大和くんの発言に、気持ちを切り替えたように見つめ直してきた鷲尾先輩。今日は……目をそらしたままなにも言わなかった。