「なんだかもう出来上がっちゃってるみたいだなあーおれ遅刻した感じ? やっぱり昨日来ればよかったかなあー。学校終わったばっかでちょっと忙しくってさーほら、美化委員の件でも仕事あったし」
べらべらとしゃべりながら中に入っていく。
みんな彼に圧倒されているのか言葉を発する人はいなかった。
「なにしに来たんだてめえ」
その空気を壊したのは、大和くんだった。
とても低い声で、会長のことをじろりと睨みつけている。
「おれ先輩なんだけど」
「だから? ひとつふたつ年食ってるだけのお前みたいなやつに敬語使うわけねえだろ」
「ひどいなー」
……このふたり、なんか関係あるんだろうか。
大和くんの口調は刺々しい。会長はそんな大和くんには慣れているかのように対応している。
「生徒会長ともあろう方がなにしにここにきたんっすか?」
浜岸先輩の声も、あまり好意的なものではなかった。
私が知らないだけで、この生徒会長はあんまり人望がないのかな。
こんなに優しそうな人なのに。
入学式とか始業式とか、集会とか。いつも壇上に上がって堂々としゃべっていたから、てっきりすごい人なんだと思ってた。
すごい嫌われてるっぽいんだけど。
「生徒会って、簡単にいえば先生の手下みたいなもんだからねぇ」
「ああ、なるほど……」
椅子に座ったまま、蒔田先輩がこっそり私だけ聴こえるような声で教えてくれた。
生徒の味方ではないらしい。
だとしても、浜岸先輩や大和くんがここまで嫌うのはよくわからないなあ……。
鷲尾先輩たちのほうが嫌がるべきだろう。ふたりの剣幕に圧倒されているのかみんなは呆然としているだけだ。
「おれも混ぜてもらおうと思ってここに来たんだけど」
「なんの冗談だよ。優等生のお前には関係ないだろ」
「そういうの偏見だと思うなあ、おれ」
いや、悪いけど私にも、会長がなんか不満を抱いているようにはみえませんけども。
にこにこ笑っている彼に心のなかで呟いた。
「優等生にも思うことはいろいろあるんだよ」
「知るかよ」
「それに……生徒がなんらかの不満をいだいて、あんなことをするなんて相当のもんだろう? それを知らんぷりするっていうのもね……。おれだって、やっぱり考えるんだよ、今までのことも踏まえて、このままでいいのかって」
会長の言葉を聞いても大和くんは嫌そうにそっぽを向いた。浜岸先輩は「へえ」と信じていないような口調だ。
「それに、おれが混ざることで役立つこともあると思うけどな。自分で言うのもなんだけど生徒会長で先生たちもおれのことは信用してるし」
「……それは、そうですけど」
鷲尾先輩に視線を移して「ね」と念を押すように告げると、みんなは顔を見合わせた。