痛みに顔を歪ませながら、涙目でドアから出てきた女の子に「だ、だいじょーぶ」と震えながら返事をした。

 ゆっくりと視線を上げれば、同い年の女の子が私を覗きこんでいる。

 えっと、名前なんだったかな。あ、柿本さんだ、柿本さん。思い出した。長い髪の毛から大きな瞳が見える。やっぱりこの子すごくかわいい。おとなになったら美人になるだろうなって感じ。


「……来たの?」

「え?」


 私と目が合うや否や、彼女は驚いた顔で呟いた。

 "来たの?"ってなんで?
 来ないと思われていたってこと?

 私が聞き返すと、彼女は口にしていたことに気づいていなかったのか、はっとした顔をしてから目をそらしてしまった。
 そのまま、なにも言わずに放送室に戻っていく。


「ああ、えっと、大和くんと、相田さん、だっけ? 来てくれたんだ」


 中にいた鷲尾先輩が私たちに笑顔を見せた。


「ドアにずっと人影が映っているから誰かと思ったよ」

「あ、す、すみません」


 中からバレバレだったのか。
 私が恥ずかしそうに謝ると、隣の大和くんが「ばあか」と小さく呟いた。

 ……ほんと、バカだ私……。

 落ち着いて中を見渡すと、昨日と同じ、先輩たちに柿本さん。あと、蒔田先輩もいた。今日もバッチリメイクをしていて私と目が合うと「よかったぁひとりかと思っちゃったー」と笑顔を見せる。

 浜岸先輩は……来てない。
 と、思ったけれど。


「よお」


 私の背後のドアが勢いよく開いて、同時に偉そうな低い声が響いた。
 浜岸先輩が仁王立ちをして私たちをじいっと眺めている。


「結局昨日いた奴ら全員来てんじゃねえか」

「……そうだね」


 舌打ち混じりのその台詞に、鷲尾先輩は苦笑をこぼしながら答える。昨日ほどうろたえてはいないみたいだ。


「さすがに、この人数じゃちょっと狭いです、ね」

「でも、他に行くところなんて」


 七瀬先輩や立森先輩やぼそぼそとそんなことをしゃべっている。
 この部屋に9人は確かに窮屈に感じる。