放送室での集まりは、ほんの少しの時間で終わってしまった。
 携帯を見ると時間はまだ2時にもなっていない。委員会までまだ1時間もある。

 大和先輩に続いて、みんなが放送室から出て行ってどこかに行ってしまった。

 私はというと……なぜか大和くんの少し後ろを歩いている。

 別に追いかけているわけでもないんだけど。行くところないし、なんとなく勝手にどこか行くっていうのも……気が引けるし。

 前を歩く大和くんは、後ろを振り返ることもなくどこかに向かってまっすぐ歩いている。目的があるかのように迷いなく突き進んでいく。


「あ、のぉ……」


 恐る恐る話しかけると、彼が歩く速度を落として振り返った。

 ただ、無言でついていくのは気まずいから話しかけただけだったから、適当に思いつくことを口にする。


「い、委員会って言ってた、けど、まだ、早いよね」

「まあな」 

「……まだ、時間あるからどこかで時間つぶしたいんだけど……どこかいい場所ってある、かな? あの、私、外部組でまだよくわかんなくて。図書館かな、やっぱり」

「図書館はやめたほうがいいと思うけど」

「……なんで?」


 彼は、私が隣に並ぶのを待つように足を止めた。


「図書館は、プライドの高い優等生が集まってるからな。暗黙のルールみたいなもんがあったりするんだよ」


 そういうもんなのか。
 まだこの学校に入って半年足らずの私にはまだまだ知らないことがあるらしい。教室以外でもそういうのがあるなんて。


「それに、俺ら1年はなにもできねえと思う。上級生が仕切ってるだろうからな」


 ああ、それは、ちょっとわかるかも。
 浜岸先輩も言ってたけど"1年のくせに!"ってやつね。飯山くんも部活の先輩にはすっごい頭下げて挨拶してるもんなあ。

 部活に入らなくてよかった、ほんと。


 「そっかぁ」と返事をすると、大和くんは「ひとりで行くのはやめとけ」とそっけない言葉を返した。
 ……心配、してくれてるのかな。

 ちらりと彼の顔を見上げたけれど、視線は前を向いていてぶつかることはなかった。表情もよくわからない。

 でも、悪い人じゃないと、思う。なんとなく。