「おい! ここか!?」
突然大声とともに、バアン、と派手にドアを開けられて体が飛び跳ねた。
心臓がありえないほど激しく伸縮して、息苦しく感じながら恐る恐る振り返る。
ドアを覆い隠すように仁王立ちしている男の人が、椅子に座っている私たちを見下ろしていた。
体格のいい、短髪の、いかにもスポーツマン、て感じだ。近くで見ると思っていたよりもずっと体が大きい。
っていうか……なんで、この人が?
「は、浜岸……な、なんで……」
私と同じ気持ちを吐き出したのは、鷲尾先輩だった。
視線を戻せば、さっきまでの凛とした雰囲気がなく、動揺しているのがわかる。
でも、確かになんで。なんでこの人がこんな場所に?
「あ? なに? お前だったのかよ。どうりで陰湿なこと考えると思った。バカじゃねえの?」
「な、なにしに……邪魔しに来たの」
「は? 邪魔するために1時間以上も場所を探しまわるかよ」
「じゃあ……」
なんで来たのか。その答えはひとつしかないだろう。
「オレも混ぜろ」
「じょ、冗談じゃない!」
そう叫んだのは、七瀬先輩だった。椅子から立ち上がって、体がぶるぶる震えている。浜岸先輩は、鷲尾先輩だけじゃなく、この七瀬先輩にもなにかをしていたんだろう。嫌われ方が半端じゃない。
そして……わ、私はどうしたら……。
私と大和くんはドアと先輩たちの間にいて、先輩たちを交互に見ながらじりじりと椅子を横にずらした。
仲間を求めるような気持ちで大和くんを見れば、彼は我関せずといった感じであくびをしている。
いや、でも鷲尾先輩や七瀬先輩。口には出さないけれどオロオロしている立森先輩の気持ちはわかる。先輩たちが昨日の放送で"宣戦布告"した中に、間違いなく、目の前のこの人は含まれていたのだろう。
サッカー部の、あの、浜岸先輩だもの。