放送室の中に、初めて足を踏み入れた。

 中は思ったよりも広く、テレビで見るラジオのスタジオみたいだった。
 そういえばたまに校長先生の映像が教室のテレビに流れていた。そういうのをこの部屋で撮っているんだなあ。

 委員会を決めるときも、放送委員はあんまり人気がなかった。茗子たちも放送委員が一番面倒だよって言ってたよね。

 そういえば……私のクラスからは、誰が放送委員だったっけ? 思い出せない。

 反乱軍とやらはみんな放送委員だったりするんだろうか。さすがに放送委員全員が関わっている、というわけではなさそうだけど。


「改めて、僕は2年の鷲尾(わしお)です。一応、リーダー、みたいな」


 黒縁メガネの彼は、思っていたよりも背が高かった。

 大和くんよりも低いけれど、もっと小さいような気がしていたのは、いつも一緒にいた先輩が大きかったからなんだろう。

 眼鏡の奥には優しそうな、ちょっと垂れ下がった目元。制服も規定通りで、着崩しているところはひとつもない。
 本当に、こんな人があんな大胆なことを起こしたんだろうか。


「3年の、立森(たてもり)で、す」


 今度は奥にいたオドオドとしたちょっと小太りの先輩だった。初めて見る人。目も口も鼻も、顔の面積に比べるととても小さい。
 紺色のネクタイは首元まできっちりと結ばれているけれど、窮屈そうに見える。そして視線はせわしなく動いている。


「2年の榊(さかき)よ」

「同じく、2年の七瀬(ななせ)」


 一重の女の先輩。気が強そうな雰囲気がある。ひざ下まであるスカートが彼女の性格を表しているみたいに固く見えた。

 七瀬先輩は、ひょろっとした人。銀色の細いフレームを、くいっと中指で持ち上げる。神経質そうな感じがある。

 そして。


「1年の……柿本、です」


 とても小さな声でそう告げたのは、隣のクラスの女の子。黒髪の綺麗な女の子だ。長く重い前髪の奥に、大きそうな瞳がかすかに見えた。

 話したことはない。けれど……何度か面識がある。

 ただ、こんなふうに対面するのは初めてだから知らなかった。この子すごくかわいいんじゃないだろうか。


「大和、由比」

「え、あ、相田、輝です」


 そっけなく大和くんが自己紹介をして、合わせて私もペコリと頭を下げながら告げた。


「目標は、終業式。正直……まだどうするかは決めかねているけど、それまでにみんなで決めて進めよう」


 リーダーの鷲尾先輩の目に、迷いはなかった。

 鋭いものではないのに、先輩と目が合うと背筋をしゃんをしてしまう。そのくらい強い意志を感じる。


「僕たちの目的は……」


 先輩の言葉に、ごくりとつばを飲み込む。
 と、そのとき。