「なーなーお前生徒会長だろ、この部屋の鍵とかもってねえの?」

「持っているわけないだろ」

「使えねえ生徒会長だなあー」


 もう反省文を書くきは全くないらしい。
 暇そうに椅子をゆらゆらと前後に揺らしながら浜岸先輩が会長に話しかける。

 会長は呆れたようにため息を落とした。


「出られたとしても、どうやって帰るんだよ。先生たちに会ったらこの反省文倍になるね」

「……窓から出るとか?」

「無理よそんなの。そもそも外に出たところで靴ないじゃないの」

「えぇー靴とかどうでもいいじゃん。反省文書くより上靴で帰るほうが絶対マシ!」

「でもぼくたちがいるのを知ってたら先生も警戒してるんじゃないかな……」

「中等部から抜けたらどうだろ」

「っていうか、七瀬くんに靴持ってきてもらう?」


 鷲尾先輩の提案に、みんなの目が輝いた。


「靴持ってきてもらって、靴に履き替えてどうする?」

「校舎はさすがにリスクが高いよな」

「非常階段使えば? そのまま体育館裏に回って、中等部の校舎をぐるっと回って校門からでたらいいんじゃねえ? さすがに中等部からの生徒まで気にしてねえだろ」


 大和くんの言うように、それが一番確率が高そうだ。
 校門を出てしまえばこっちのものだろう。


「いやいや、まずどうやってここから出るんだよ!」


 そこが一番の問題だ。さすがに窓ガラスを割るわけにもいかない。割ったってここは3階だし。

 さっきの勢いを失ってみんなが無言になってしまった。

 そう。鍵がないんだよなあ……。……鍵。この部屋の、鍵。


「あ」


 そう、鍵だ。


「なに?」


 問いかけてくる大和くんを無視して、鞄の中を探る。
 返さなくちゃと思っていた鍵がまだ、あるはずだ。

 美化委員で預かったままの鍵。私はまだそれを、返していない。


「あった」


 手にして振り返ると、みんなの瞳がキラキラと輝いていた。