「っていうかよー、どう考えてもあの生徒会長のせいだろ」
「そうだよねーあんな土壇場でさー、意地悪くないー? 言うならもっと早めに言えばいいのにねえー」
「……おれもここにいるんだけど」
蒔田先輩と浜岸先輩の言葉に、会長が気まずい顔をして振り返る。
「未遂で済んだおかげで、他の生徒にこのことが広まらないんだから、ちょっとは感謝してほしいなあー」
「うっせーよ! よく言えるなお前!」
ああ……浜岸先輩は元気だなあ……。
相変わらず大声だし、偉そうだ。でも、前より怖くはなくなった。
そばにいる先輩たちも、今までは浜岸先輩の声におどおどしていたけれど、今はクスクスと笑っている。
窓の外には相変わらず、制服のシャツの同じ色の空が広がっている。白く、薄い膜が張ったような、うす水色の空。
茗子たちとも遊びたいのに、いつまでここに閉じ込められなければいけないのだろう。
カラオケも行きたいし、プールも行きたい。ずっと話してたカフェにも行きたいし、買い物もしたい。楽しい夏は、夏休みは、これからだ。
「そういえば、お前、ちゃんと言えたのか? すっきりした顔してるけど」
「え? あ、うん……なんか、ぐだぐだになっちゃったけど」
大和くんに言われて、苦笑をこぼしながら思い出す。
涙と鼻水でぐちゃぐちゃになって、わんわんと子供のように泣き叫んだだけだった。これといって両親と話したわけじゃない。
ただお母さんが小さな声で「ごめんね」と言ってくれた。
本当に疑っていたわけじゃないんだよ、と昨日夜、お父さんが言っていた。ただ、あまり触れないほうがいいだろうとお母さんと話していたらしい。
そんな両親の気持ちを考えると、私も耳をふさいでいたんだなあ、人のこと言えないなあと、子供で、狡くて、自分勝手だったと思う。
聞いて欲しいと思うと同時に、私は聞きたくないとも思っていたんだ。
自分のことでいっぱいいっぱいで人の気持ちを考えようとしなかった。
なんて、自己中心的な思考だったのだろう。