誰も話をしないこの教室で、どのくらいの時間を過ごしたのだろう。
カチャッと鍵が開けられる音がして、会長が入ってきた。
先生たちはいない。
唇を噛んで、眉間にしわをよせている。なにかを耐えているかのように渋い顔のまま、私たちの前に立った。
「て、めえ!」
「悪かった」
殴りかかるんじゃないかという勢いで席を立った浜岸先輩に、会長は頭を下げる。深々と頭を下げて、「本当に、悪い」ともう一度呟いた。
「なんで? こんなことしたわけ?」
大和くんが、淡々とした口調で問いかけると、会長はゆっくりと顔を上げる。口をきゅっと結んでいて、まっすぐに見つめ返すその瞳には、ゆらぎは感じられなかった。
「自分のしたことが、正しいとは思ってない」
降ろされている先輩の手は、ぎゅっと、固く握られていた。
「きみらの言葉を、思いに耳をふさいでいたことを知った。おれはずっと、みんなの声に耳を傾けることをせずに、正しいと思うことを……一方的に伝えていただけだった。押し付けていただけだったんだ」
「だったら、どうして」
「だからこそ、止めなくちゃと、思ったんだ。きみらの思いを聞いたからこそ、この方法ではなく、もっと、向き合うべきだと思ったんだ」
その意味を、多分みんな察したんだろう。
誰もがなにも言わずに、ただ会長の言葉に耳を傾ける。私も、会長の言葉に、なにかがすとんと胸に落ちるのがわかった。
「あんな場所で、不特定多数に叫ぶよりも、もっと、もっと、伝えるべき場所と、相手が、いる」
「……なんだそれ、今更……」
「おれはこれから耳を傾ける。みんなにも、そう感じてもらえるように生徒会長として伝えていく。対等に、話し合いが、できるように」
「……もう、いいですよ」
会長が必死に、震える声で話すのを、鷲尾先輩が遮った。