鷲尾先輩がゆっくりとみんなを見渡して、緊張した面持ちで空を仰ぐ。先輩は今、なにを考えているんだろう。


「会長来ないけど、そろそろ中に入ろうか」

「じゃあ、アタシたちは鍵を」


 先輩が窓に手をかけて開けようとする。
 けれど、それは固く閉じられていて、鷲尾先輩の顔が険しくなった。


「……閉まってる」

「はあ!? オレ昨日ちゃんと帰りに開けたけど!」

「いや、疑ってるわけじゃない……先生がたまたま見つけることも、十分ありえたんだ、そこまで考えてなかったな……」


 一気にみんなに不安が押し寄せる。
 ど、どうしよう。


「誰か先に入って中から開ける?」

「でも、奥にぼくらが入ったらおかしいよ」

「会長なら」


 どうしよう、どうしよう。
 もう、時間がない。すでにみんな体育館に集まっているだろう。


「あ、会長」

「やっとき、た……」


 立森先輩が私たちの後ろを指差して、みんなが振り返る。
 そして、みんなが言葉を失った。


「な、なんで」

「……悪い」


 目を伏せて、軽く頭を下げる会長の後ろには、生徒指導の先生と、校長先生、教頭先生が立って私たちを見つめていた。