まっすぐに見つめてくれる瞳を見ていると、嬉しいような、悲しいような、申し訳ないような、そんな色んな感情がぐちゃぐちゃに混ざって、どうしたらいいのかわからなくなった。


「ほんとは、ずっと友だちになりたかった」

「も、もう! 友だちだよ!」


 大きな声で反応してしまった。
 そんな私に、柿本さんは目をまん丸にさせてから、「うん」と、それはそれはかわいい顔で笑って言ってくれた。


「……相田さんって……結構勢いで話すよね。いつも」

「そ、そうかもしれない」


 思い出せば毎回そんなことしてる。

 思ったことはすぐに口にする性格で、中学の時にそれが元でひとりになって……同じことはしないように過ごしていたつもりだけれど、案外私はなにも変わってなかったのかもしれない。


「ほんとは、あたし……こんなことするの、嫌だったんだ」

「え? そうなの?」

「友だちがいないのは辛かったけど、放送部は好きだったし。学校は嫌いだったけれど、それだけ。だからみんなみたいに伝えたい思いなんてなかった」


 そうなのか……。でも、今まで柿本さんはいつもなにも言わなかった。
 じゃあどうして、一緒にやろうと思ったんだろう。


「でも、こうして、今まで話したことのない人と話して、みんなが思いを吐き出したり、必死に言葉にしたり、相田さんがあの日、夜の学校で伝えなくちゃって言ったときにわかったんだ」

「なにを?」

「あたし、鷲尾先輩に好きだって、言いたかっただけなんだ」


 そっか。
 そっか……って。


「え!?」

「好きだから、一緒にしようと思っただけ。好きだからそばにいたかった。それを、知って欲しかったんだよね」

「あ、あーえ? あ、そう、なんだ」


 恥ずかしそうにはにかむ彼女はとてもとてもかわいくて。

 そういえばいつも、鷲尾先輩のことを気にしていたっけなあなんて、今更思った。

 そっか。そうだったんだ。


「こ、告白、するの?」

「……いつか。前まではそんなこと考えたこともなかったけど。今は、いつか、ちゃんと言葉にしたいって、思う」

「うまく、いくといいね」


 根拠なんてなにもないけど、うまくいくんじゃないかなって思った。
 すぐにできなくてもいいんだよね。
 できるときにすればいい。その力を、蓄える時間も、必要なんだ。

 私たちが今まで、過ごしてきた時間も、そんな時間だったのかもしれない。